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渋谷 地域猫  SHIBUYA☆CATS

表参道・地域猫サロン④ Sおばあゃん~サロンオープン初日の出会い

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サロンをのぞく地域猫

 Tさんのサロンがオープンしたのは、23年前。当初から現在に至るまで、れっきとした人間のための美容室です。ですがこれまで160匹もの猫を保護し、もらい手探しをしてきました。まさに地域の猫および猫好きの「駆け込みサロン」なのですが、そうなるきっかけは、オープン初日にあったそうです。
 サロンを開いたその日、子猫を6匹抱えたおばあさんが突然やってきて、「1匹でもいいので里親になってくれませんか」と頼んできたのです。
 それは隣接する都営住宅にお住まいのSさん(82歳)でした。Tさんはとにかくゆっくり話を聞こうと、夜、仕事を終えてSおばあさん宅を訪ねました。おばあさんは都営の敷地の飼い主のいない猫たちの世話をしている方でした。ご飯は朝昼晩3回、地域猫1匹ずつにあげていました。缶詰めとドライフードを各猫の好みにあわせてお皿に盛るのです。飲水も朝昼晩と替えていました。
 それだけきめの細かい世話をしていましたので、おばあちゃんがご飯タイムで外に出てくると、20匹以上の猫たちがゾロゾロ出てきて、後ろをついて回ります。まるで『白い巨塔』の財前教授の回診のようだったとか・・。
 不妊去勢も自費でやっていました。猫を撫でながら布袋に入れて、キャリーに移し、動物病院に連れていき、手術済みの猫には首輪をつけていました。猫の世話だけではなく、都営や周囲の掃除や草木の手入れもしていたので、猫嫌いの住民にも文句を言わせない、今でいえば、完璧な猫ボラさんだったのです。
 連れてきた子猫たちは、都営の敷地内で生まれました。母猫は出産して2日後の朝、死んでしまい、子猫たちはそのお腹にしがみついていたそうです。Sさんは、まだヘソの緒もついてる子猫を温め育てはじめた3日後に、サロンがオープンしたのでした。
 「都営住宅は高齢者が多く里親探しは難しいけど、美容室なら若い方々がいるだろうから」と頼みにきたのでした。
 Sおばあさんがサロンに来たのは、そのタイミングからしてとてもラッキーだったといえます。というのも、サロンのTさんも子供の頃から筋金入りの動物好き。実家では犬猫はもちろん、ウサギ、モルモット、ハムスター、小鳥やカラスまで飼っていました。捨て猫を見つければ、家族と一緒に育てて飼い主探しをしてきました。
 そんなTさんなので、高齢のSさんが6匹もの乳飲み子を育てるのは大変すぎると思い、里親が決まっている1匹以外の5匹をすぐに引き受けることにしました。そしてスタッフを巻き込んでの飼育が始まりました。
 子猫たちは3カ月まで無事に育ち、お客様やスタッフでもらい手はすべて決まりました。Sおばあちゃんに伝えにいくと、涙を浮かべて喜んでくれたそうです。おばあちゃんはその後も献身的に都営の猫たちの世話を続け、昨年天寿をまっとうされました。
 オープンしたてのサロンが子猫育てに奮闘していた頃、店の前にいつしか1匹のサビ猫が姿を見せるようになりました。それがサロンの初代店長になる「ちょーちん」でした。
                               (つづく)

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